幸せになってね！！

夏目誕生日企画第3弾。
多分これでこの企画は完結です。

最後は藤原夫妻とのほのぼの系なお話です。
8巻の影響を受けて藤原夫妻が大大大好きになったので、
頑張って初挑戦です。
ちょこっと北本・西村も登場。

夏目、お誕生日おめでとう！！！！

―「あら貴志くん、今日誕生日だったの？知らなかったわ。ごめんなさい、何も用意していないわ。」
　―「いえ、いいんです。」

寂しい、悲しい、おれの誕生日。
生まれてきておめでとうなんて、言われた事、ない。
おれは本当に生まれてきてよかったのだろうか。
いらない子なのに。誰にも望まれていない子なのに。
なんで生まれてきてしまったんだ。
―幸せって、なんなんだろう。



「なーつめっ！」

「何ぼーっとしてるんだ？考え事か？」

「い、いや。なんでもないよ。」

北本と西村がおれの机に寄ってきた。
おれは平然とかわす。
こんな暗いこと思い出していたなんて、言えるわけない。
そう思ってまたうつむいた。

「「夏目、誕生日おめでとう！！！」」

唐突に、そんなこと言われたから呆然としてしまった。
そしておれの机にばらばらとチョコやら飴やらが、いっぱい降ってきた。

「こんくらいしか用意できなかったんだ、ごめんなー。」

「いや･･･ありがとう！！嬉しいよ！！！」

「夏目、自分の誕生日言ってくれないから、俺達前日まで知らなかったんだよ。」

「じゃあ何で知ったんだ？」

「昨日スーパーで搭子さんに会ったんだ。それで教えてくれたんだよ。
　何かすげーいろいろ買ってたぜ、搭子さん。今日は帰るのが楽しみになったな、夏目。」

搭子さんが･･･？俺の為に･･･？



「ただいまー･･･。」

「あ、あら貴志くん！おかえりなさい！」

搭子さんはいつもより慌てた感じでせかせかとおれ背中を押し、自室へと行かせた。

「晩御飯まで降りてきちゃだめよー。」

「あ、はい･･･。」

搭子さん･･･。ありがとうございます。
これだけでも、いい誕生日になっています。

しばらくして、下から声が聞こえてきた。

「貴志くーん、御飯よー。」

おれは高まる鼓動を押さえつつ、震える足で階段を下りた。
食卓の扉を開ける。

そこには豪華で明るい食事と、にぎやかに飾り付いた食卓と
搭子さんと滋さんの温かい笑顔があった。

「お誕生日おめでとう、貴志君。」

「誕生日おめでとう、貴志。」

温かい温かい、笑顔、声、食卓。
これが幸せと言うものなんだ。
こうやって目で、肌で、耳で、感じるものなんだ。

「ありがとうございます･････!!!!」

ありがとう、搭子さん、滋さん。
こんな素敵な誕生日、初めてだ。

おれは今、幸せです。